読むと楽しくて嬉しくて堪らない気持ちにさせてくれる極上の物語たち。入江亜季『群青学舎』第４巻

入江亜季『群青学舎』第４巻（完結）
「ルカは家族でやってる街の宿屋の長男。忙しい時期だから人を雇って欲しかったが、そのなり手は無さそうだった。しかし、ある日やってきた男女の旅人ライダーとマージのうち、朗らかで美人のマージが宿代の一部として働いてくれることになった。つい目を奪われてしまうルカだったが、何をしているのかよく解らない男ライダーと彼女が仲良くしているのを見てしまう。だが、そのマージもライダーの素行には何やら文句があるようで・・・」
エンターブレイン--------ビームコミックス-------2009年--------660円

輝くような魅力を持つ極上の物語を連ねてきた『群青学舎』がとうとう完結です。
収録されているのは、宿屋の息子ルカと２人の旅行者の話「橋の向こう側」（前後編）、美人のママと三人の息子とパパの日常を描くシリーズの「七色ピクニック」「七色ファミリア」「七色トゥモロー」、２人のスパイのいがみ合いを描く「スパイ・アンド・スパイ」、惚れ薬入りチョコの話の完結編「続々々々ピンクチョコレート」と「完ピンクチョコレート」、老木が見守る正反対の２人を描く「老楡」、家出した２人の少女の卒業式を描く「本日はお日柄も良く」の10本となっています。さらには最後には、いままでに描いた話のそれぞれのキャラクターが登場したりする後日談的な「四季」というのも入っています。

ただいま読了しましたが、ほっんとうに素晴らしいお話ばかりでしたっ！　　読んでる間中、楽しくて嬉しくてウキウキニヤニヤしちゃって堪りませんでしたよ。

どれもが良かったのですが、特に私が好きなのは４巻通して描かれた美也子さんと春日くんの「ピンクチョコレート」のシリーズでしょうか。今回は守屋教授の弟・捨松に完成したチョコを食べさせられてしまうわけですが、最後はきっちり落とし前つけて、どんなにかラブラブか再確認させられました。惚れ薬があろうと、美也子さんが無駄にハイスペックであろうと、やっぱり２人はラブラブなわけでして。ともかく、美也子さんがしっかり春日くんに惚れてるってのを見れただけでも楽しかったです。

あと、この巻に入っている「七色」シリーズが非常にいい感じでした。もうね、この家族に入れて欲しいってくらいに！！
アースラ、フレッド、ミシェル、ピエール、シャルルの五人家族のお話なんですが、幸せで幸せで、そこらじゅうに幸せが溢れてる。何をやっても幸せ、という最も素晴らしい日常を切り取って描いた傑作かと。特にはじめのピクニックの時の言葉の面白さ、発想と行動の突拍子もない楽しさ、そしてその全てがすんなり納得できるような雰囲気の良さが、読んでいて心地良かったです。

そして何より忘れてならないのが、奔放で美人なアースラ・ママがエロくて最高です。フレッド・パパ。あんた私と代わりなさい。（結局そこか
秋なのにショートパンツに水着（？）に毛皮とか、朝はパンツ一丁だったりとか。そんなママと一緒に暮らすって幸福を子供たちは捨てるなんて。くそう健全に育ちやがって（健全に育ってなかったら違う雑誌行きですが）

「橋の向こう側」に登場した旅人の２人って、『コダマの谷』に登場した２人ですね。途中まで気づかなかった。あの小僧に見えたマージがこんな魅力的な女の子に！

最終話の「本日はお日柄も良く」は、目的の見えない少女２人と担任教師の微妙な関係の描き方も非常に良かったです。これもお薦め。
あ、最後の「四季」の中で、一条さん登場してましたが、幸せになれそうでよかったよかった。あの話は全巻通しても特に印象に残る良作でしたからね。

ともかく、この漫画が読めたことに感謝を。そして尽きせぬ拍手を。



『フェローズ』で「乱と灰色の世界」を連載中。

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参照サイト
あり胡同（入江亜季公式）
http://www1.plala.or.jp/ali/
空間コミックビーム
http://www.enterbrain.co.jp/comic/

この記事もどうぞ。
入江亜季の新作「乱と灰色の世界」が新連載！　他、充実の作品群。『fellows!（フェローズ!）』2008年12月号（vol.2）
http://mamiduku.blog.shinobi.jp/Entry/744/
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